《第790話》『聖夜の夜越し』
「夜貴、今日は何の日か分かるか!」
「クリスマスイブだね」
いわゆる、クリスマス前夜。クリスマス本番は明日なのだが、この日もまた、世間では特別な日として扱われている。固有名称がついているのが、何よりの証だろう。
「クリスマスイブには、サンタが来るという」
「――そうだね。サンタだね」
「全くのデタラメだとは――妾は、悲しい……」
ほんの少し前までは、サンタクロースを信じていた呉葉。しかし、僕の先輩である狼山先輩が、遊ちゃんのためにサンタ衣装を用意していたところを呉葉に見られたのだ。
それだけのみならず、何だと聞かれて理由まで口にしたものだから、そこから芋づる式にどんどんどんどんと――そして、夢見る乙女(1000歳)の夢想は打ち壊されたわけなのである。
「え、ええっと、ね、」
「だが、妾は転んでも立ち上がる――ッ!」
「え、お、おお?」
奮起したように、ガッツポーズして立ち上がる呉葉。
なんだかわからないが、元気が出ているようならそれで、
「サンタは、ここにいるのだ」
「え、ここって?」
「ここだ、ここ」
「――え? 僕?」
呉葉は、僕の顔を上目遣いで見上げてくる。――妙に、熱のこもった視線で。
「今年のサンタは、きっと子供をプレゼントしてくれるに違いない」
「!?」




