《第789話》『その枚数数知れず』
「ん~、むむむむむ」
「どうしたの呉葉――うわ、なにこれ!?」
帰ってくると、テーブルにつき、呉葉が何事か唸っていた。
彼女の前には、何やらものすごい数のファイルが。それがテーブルの半分以上を占拠し、うずたかく積まれている。
「おお、お帰り夜貴。これは妾がコレクションしているテレホンカード達だ」
「ホント相変わらず趣味が多岐にわたるね――」
正直言って、彼女の趣味の全容を僕は図り切れていない。きっと、他にどんな趣味があるのかと聞けば、一晩では語りつくされないに違いない。
「ほら、もうすぐ大晦日だろう? 年末の大掃除の前に、次元の狭間の整理をだな」
「言う事の格差! 次元の狭間とテレカって――」
「テレホンカード馬鹿にするでないぞッ!」
「わっ、びっくりした!? いきなり大声出さないで!」
「そもそも、テレホンカードと言うのはだな、元々公衆電話と言うモノがお釣りを戻せないことから――……」
あ、これ地雷踏んだかも――、
「と、言うわけでだな、」
「呉葉、呉葉」
「ん?」
「で、結局このテレホンカードがどうしたの?」
語って数十分。少し落ち着いてきたところへ、当初の話へと戻ることに。ここまで熱く語るとは思ってもみなかった。
「ああ。いや、単純にどこへ仕舞えばいいのか困ってしまってな」
「次元の狭間に仕舞ってたんじゃ?」
「どこに入れたか分からなくなって困りたくはない! テレカ以外にもたぁっくさんモノを仕舞いこんでいるのだ!」
「ドラえ〇ん!? いったいどれだけ次元の狭間に仕舞ってるの!?」
すると呉葉は、ん? と、目をきょとんとさせた。
「東京ドーム三個分くらいだな」
「もうちょっと規模に統一感を持たせて!?」




