《第788話》『行き方はバス』
「コーハイ、バスケの試合観戦、興味あるかい?」
「いきなりどうしたんですか?」
ディア先輩が、紙きれを何枚かぴらぴらさせながら、声をかけてくる。と言うか、一応こっちは書類仕事の最中です。あなたも仕事してください。
「いやぁ、観戦チケット貰っちまってね。けど10枚近くも頂いちゃって困ってんのさ」
「貰いすぎでは――」
正直、僕はバスケットボールに興味があるとは言い難い。と言うか、そもそもスポーツ自体全般的に興味のある方ではなく、僕自身も活発的かと聞かれればそうではないと答える人間だ。
ただ、呉葉ならあるいは、と思わなくもない。割とスポーツ中継とかをよく見る方だし、もしそう言う機会があると聞けば、喜んでくれるかもしれない。
「それで、どうだい?」
「そうですね――折角ですし、頂いてもいいですか?」
「おや、意外。正直、コーハイは興味あるとは思って無かったから、割と聞いてみるだけ聞いてみようかな、程度だったんだけど」
「その通りなんですけど、呉葉がもしかしたら、と思って」
ディア先輩は、なるほどな、と言って、それを二枚手渡して来た。
――黒地に、赤い文字が印字してある。妙に禍々しく、そして、何と書かれているのか読めない。
「――ディア先輩」
「なんだい?」
「これ、ホントにバスケットボールの観戦チケットなんです?」
「そうだよ。魔界の」
「魔界!?」
予想だにしない言葉に、僕は驚いた。
「親父がバスケのチームを魔界でいくつか作らせてね。それで、今回が初試合なのさ」
「親父さんなにやってんですか――」




