《第783話》『貧乏狐』
「そ、そうじゃ! もっと早く言っておれば、余とてじゃな!」
駄狐はまるで倒壊する建物の中で脱出口を見つけたかのように、焦りと喜色を滲ませ反論した。相変わらず、威厳もへったくれもない狐である。
「毎年毎年確認を取っていたザマス。先ほど申し上げたザマス」
「そ、そうじゃとしても、もっと強く――っ」
「そして、このタイミングで返金していただいた理由ザマスが」
「ふむふむ?」
「丁度、借金が狐様の財産とほぼ同額になってしまったためザマス」
あっけらかんと、金霊は言う。悪びれた様子は微塵もない。むしろ当然のことを言っている、という気満々である。まあ、借りた金を返すことは当然のことだからな。
しかし、何故同額になった時を見てこいつは強引な手に?
「このままでは、借金は膨らむばかり。しかも、年々浪費が収入を上回り、財源は減少してゆく一方。同額になった時点で、これ以上静観していれば返済はあり得ない。そう判断したザマス」
「は、破産してしまうじゃろうがァ!?」
「返済すべき借金は無くなったため、首の皮一枚と言ったところザマス」
いずれにせよ、駄狐のアホが財産を失ってしまったため、今後は厳しい生活が予想される。
しもべ共は元々金どうこう関係ない(関係なくもないわけではないが)にしても、派手な生活などもっての外。
「とりあえずその十二単はとっとと質にでも入れてくるのだな!」
「それは貴様が言いたいだけじゃろ!?」
「ああ!」
「ええい、もうよいのじゃァッ!」
駄狐より、唐突に妖気が膨れ上がった。
「そもそも、何故余が借りた金を返さねばならんのじゃ――ッ!」
「――何?」
こいつ、踏み倒す気か!?




