《第781話》『ある種似た者同士』
「つまり金霊、貴様が余の金を奪ったという事かえ!?」
「奪ったなどと人聞き、いや、妖聞きの悪い」
「無くなった、などと嘘までついたじゃろう!」
「嘘ではないザマス。返してもらったら、無くなったザマスよ」
「屁理屈こねおってェ! もう許さぬ! 今ここで消し炭に――」
狐の周囲から、熱気が立ち込め始める。やかんを置けば、沸騰どころか瞬く間にそれそのものが溶けかねないだろう。
――まったく、この単細胞狐。少しは話を聞いてはどうか。妾は怒りを滾らせる狐の傍に立つ。
「まて駄狐」
「おごっほォ!?」
脇腹に肘うちしてやると、駄狐はすぐに熱気を霧散させて跳び上がった。
「っ、何をする狂鬼姫ィ! 貴様よもや、このコソ泥に味方するつもりではないじゃろうな!?」
「そうではない。ただ、貴様がここでブチ切れると、人間の夜貴が危ないから止めたのだ」
「多分、あのまま炎出されたら巻き込まれちゃう、かな――」
「別に貴様らがどうなろうと知ったことではないが、夜貴の命を危機にさらされては困る。――もう少し冷静になれ馬鹿者」
「出会っていきなり殴りかかろうとしたのはどこのどいつじゃ」
奴にとっても、夜貴がどうこうは関係がないだろう。が、こちらの言い分ははっきり通させてもらう。少し落ち着いたのか、駄狐は不満そうにしながらも再び発熱することは無かった。
「そもそも、返してもらった、ってこのヒトは言ったよね。利子、とも言った。つまり、鳴狐はお金をこのヒトから借りたことがある、という事なんだよね――?」




