《第779話》『お金はどこへ消えた?』
「狂鬼姫! 金ェ!」
「何度も押しかけてくるな駄狐ェ!」
扉を破って、またもや我が家に入ってくるアホ狐。もうこれから眠る時間だと言うのに。無論、それは夜貴も同じ。
「え、えっと――もしかして、まだ解決してないの?」
「解決していなかったらこんなところまで来てはおらぬぅ!」
お金が盗まれた、という話だが。開口一番だけを聞けば、借金取りか何かのようだ。
「だから、違うと何度も言っている。にもかかわらず、いつになったら覚える!?」
「犯人がはいそうですかと自白しないのと同じくじゃ! 貴様は嘘をついておる!」
「面倒くさいな貴様!」
追い返せども追い返せども、毎日毎日やってくる。流石の妾も、多少の憐れみはあれど面倒に思えてきた。いや、それは始めからだが。
「ねぇ、呉葉――僕思うんだけど」
「何だ?」
こそこそ、という夜貴からの耳打ち。
「解決を手伝ってあげたら――?」
「は、ァ――? なぜ妾が」
「だって、このまま解決しなかったら、この先暫く続くことになるよ? 扉の修理何回目――?」
「むぅ――」
確かに、夜貴の言う通りだった。狐はアホなので、何を言っても聞かないのは火を見るより明らかだ。
「わかった、わかった。話を聞こう」
「とうとう白状したかえ!」
「違うといっとろーが。もう少し、状況を詳しく説明してくれ。どういった状況で、金銭の消失に気がついた?」
「あ? そんなもの、しもべから聞いたに決まっているじゃろう」
「――どのように?」
「『金庫の金が一つも無くなっていました!』以外に何があると言うんじゃ」
「…………」
「…………」
「な、なんじゃ――?」
「え、えっと――そのヒトが一番怪しいのでは?」




