《第774話》『ミサイルツリー』
「お、クリスマスツリー」
夜。総合スーパーで買い物ついでに外食した帰り。通りかかった室内の店の前に、クリスマスツリーが飾られていた。
ちなみに、僕と呉葉が通りかかったその店は、普通の雑貨屋さんである。
「そっか、もうそんな季節なんだね」
「こう言うのを見ていると、手のひらサイズの小さいモノでいいから、ツリーが欲しくなるな」
「そんな小さいの――遠慮しなくてもいいのに……」
「クリスマスプレゼントが高額請求では笑えんからなぁ」
「何? 遠慮しないと都会のど真ん中に立ってるようなの買っちゃうの?」
そうなってくると、もはやそれそのものがクリスマスプレゼントでもいいくらいだ。勿論、請求書と一緒に。
ちなみに、毎年僕らは互いにプレゼントを渡し合っている。去年は、僕からはブローチをあげて、呉葉からはいつどこで作ったのか、彼女自身の写真集を貰った。――R-18指定の。
「しかし、数年前はリア充爆発しろとネット掲示板等に書き込んでいたのが、今ではまるで嘘のような充実感だ。クリスマスに限らず、毎日幸せたっぷりだ」
「あはは――そう言ってもらえると、僕も嬉しい、かな」
「妾が! 妾達がリア充だッ!」
「嬉しいのは分かるけど、突然大声上げないで!?」
しかも、どこからか殺気のこもった視線が飛んできている気がする。気がついているのか、いないのか。
今年は、何をプレゼントするべきか。僕は、そして僕らは、その場を後にする。リア充って、アレだよね? リアルが充実してる、って言う言葉の略。充実は否定しないけど、僕にとっては普通だしなァ。
後日、クリスマスプレゼントとは別に、小ぶりのかわいいツリーを買ってあげた。それがプレゼントでもいいんじゃないかと思える程、喜んでくれた。




