《第763話》『お風呂場の奇跡』
今日は11月26日、語呂合わせでいい風呂の日。妾は快適な入浴のため、風呂掃除に勤しんでいた。
「フンフッフフ~ン――ぶわっ!?」
ら、突然風呂がまからお湯が溢れた。突然のずぶ濡れに、妾は妙な悲鳴をあげてしまう。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじやぁ~ん! お風呂の精、とーじょー!」
「けっほけっほ、な、なんだ貴様は!?」
いきなり風呂がまのなかに現れた、やたら体格のいい半裸のジイサン。色はやや褐色、誰かのようにアロハでも着せればもっと似合うに違いない。
「早計300000回磨かれた事が、呼ばれた合図! 魔法の風呂がまの精、あなたの願いを一つだけ叶えましょう!」
「妾はどこからツッコめばよい!?」
三回じゃないのか、とか、魔法の風呂がまとはなんぞや、とか、それだけ磨いて一つとはコスパ悪っ! とか。この不審者相手に、言いたいことが出るわ出るわ。
「それがあなたの願い事で?」
「えっ、あっ、違う! 違うぞ!」
シェン〇ンみたいに確認してくれるヤツで助かった! 状況に少々ついていけていないが、ここは実のある願いをだな。
「願いを無限に叶えてくれ!」
「ザンネーン、それは適用範囲外!」
「どうせそう言うと思ってた! ならば一つ、ちょっと待ってろ!」
「それがあなたの願い事で?」
「それはもういいわい!」
妾は大急ぎで居間に駆け、棚から一枚の紙を持ち出してくる。
「このハズレ宝くじを一等に!」
「ふむ、その願いでよろしいですね?」
俗っぽいとか言うな! 一等の夢、誰しも一度は見るだろう!?
妾とて、一度は! 一度はそう言った幸運にあやかりたいのだ
「てぇいるまえぃろむゎえぇ~いい!!」
「!!!」
妙に風呂っぽい(?)謎の呪文と共に、辺りが煙、いや湯気に包まれる。
そしてそれが開けたとき――妾のハズレくじは一等に変わっていた。 凄く惜しかったので、番号は覚えていた。手元にあるのは、間違いなく一等の5億円だ!
「お、おお! これが当りの宝くじ! 感謝するぞ!」
「いえいえお構い無く! それでは!」
――誰が予想したろう。消える際にも、お湯が吹き出るなど。
「ああっ!? 妾の当りくじがァ!」
吹き出たお湯が、当りくじを破壊していった。
ついでに、魔法のランプが消えるのと同じく。風呂がまも消えていた。
早い話が、踏んだり蹴ったりだった




