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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二十一章
762/1022

《第761話》『はだのよせあい』

「そしてあの時、よもや愛を語られるとは、あの時は思いもよらなかったぞ」


アルバムを捲りながら、呉葉は懐かしそうに笑みを浮かべる。


「だ、だから、あの時はそう言うつもりもなかったんだって!」

「いやいや、『こんなにも誰か一人のことを想ったのは初めてだった』など――どう考えても告白文句だろう? 他に何だと言えばよいのだ」


呉葉曰く、そのように言われて、放って置けなくなった、とか何とか。

けれども、他にも何か理由があるらしく。


「妾はな、妖怪達を纏める立場にあった。だからか、奴らが妾のためを思って何かをしてくれようとしたことも、それこそ星の数ほどある。けれども、こう、何というか、それとはまた異なる――言葉で説明するのが難しいな」

「同情?」

「そうではない。むー、何と言うか、対等な目線で言われたのが随分久々だった、からか? いや、それも微妙にずれている気がするな。どう言ったものか」


呉葉は眉間に迷路を作って出口を探していた。

でも何だかんだで婚約(結局どちらから申し込んだかは曖昧なんだけど)受け入れたのは、多分同じ気持ちだったから、なんだと思う。


「――そう、運命を感じたっ!」

「思いの外あやふやな回答!」

「仕方ないだろう! この世の全てが言葉にできると思うなっ!」

「し、締まらないなぁ」

「互いに唯一無二を感じた! これでいいではないか!」


多分だけど、唯一無二を感じた、と言う言葉はあながち間違いでもないのだろう。

呉葉はその出で立ちから望まぬ扱いを受け、挙げ句の果てにたった一つの拠り所すら奪われた上に鬼にされ。古今独歩の道を歩き続けてきた。

僕も僕で、人生に選択の余地が出来るほど知識を与えられず。彼女に会って初めて温もりを与えられて。


それは互いに、寒さゆえに身を寄せあっただけに過ぎないのかもしれない。だけど、その暖かさはそれこそ「唯一無二」で、かけがえのないもの。

だから僕らは、今も肩を寄せあっている。隣に在るのを当たり前と感じ、この先もずっと暖めあうのだ。


「――さて、そう言う話をしていたかからは知らんが、」

「うん?」

「ムラムラしてきた」

「君はまたすぐそうやって台無しにする!」


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