《第760話》『そんなわけで時を経て今がある』
「あの状況にもなって、まだバレていないと思っていたのは流石にすごいと思う――!」
何のかんのと、アルバムを見ながら思い出話に花が咲く。僕らの結婚する前の話。出会いの話。
「しょーがないではないか! こっちだって状況が状況だったのだ! 狂鬼姫の名で呼ばれたことに気がつかんくらいには、あの戦闘では気が抜けなかった!」
「はは――うん、分かってるよ」
「アレだな、零坐のヤツには一度お灸を据えなくてはなるまいな」
「すでに一回やってるよぉ! 二度目はやめてあげて!」
「――しかし、今考えてみると。平和維持継続室、もとい、導摩が妾を呼んでいたから、孤立させるなどと言う回りくどい手法がとられていたのだな」
「うん、そういう事だろうね――」
孤立させて、軍勢を差し向けて統率の取れない狂鬼姫の配下を一網打尽。そして、一人になった呉葉を――と言うわけ、だったのだろう。
「しかし、よかったことももちろんある。いや、お釣りがくるほど、と言うべきか」
「うん――」
それは、僕らがこうやって隣り合っていられること。アレが無かったら、僕らが出会うことは――おそらく、無かっただろう。
「そしてあの時―――、」




