《第757話》『それは敵か、はたまた味方か!』
「――状況と証言から考えて、おそらくお前がやってくれたのだろう?」
妾は少年にそう声をかける。対する樹那佐 夜貴は、どこかおっかなびっくり、と言った様子でこちらを見返して来た。
まあ、あんな戦いの後だ。年若い人間には刺激が強すぎたのかもしれない。
まだ妾自身、「狂鬼姫」であるとは明かしていない。フツーに接すれば、フツーにこのこわごわとした態度も解いてくれるに違いない!
「礼を言うぞ。おかげで、事態はこの通り収束した。お前が居てくれなければ、もっと悲惨なことになっていただろう」
「う、うん――」
「しかし、人の身で一体、どうやって皆を鎮めたのだ? 奴らは比較的妖怪の中では温厚な方ではあるが、しかし全体で見れば、と言うだけだ。人間を嫌う者はいるし、ちょっと興奮しただけで話も何も通じないヤツだっている。全体の流れを変えるのは、非常に困難な筈だ」
「…………」
なんだ、この沈黙。妾は妾なりに、フレンドリーに話しているつもりなのだが。
「そ、その――えっと、」
「うん?」
「僕はただ、出口へと向かう皆の前に立ちふさがっただけ、で――」
「立った、だけではそうはなるまい?」
「立って、それで――えっと、」
「ふむふむ」
「――退魔札投げちゃいました」
「…………」
「…………」
「お、お前ーーーーーーーッッ!!?」
どんな卓越した手腕を見せたかと思えば! まさかの退魔札!? こいついきなり何をやっとんじゃい!?
「ご、ごめんなさい!」
「ええい、やはり人間との間に平穏は許されんのか!? どいつもこいつも争い大好きか!」
「そ、そう言う意味で退魔札使ったんじゃありませんッ!」
だったらいったい何だというのだ!? 退魔札、一体他にどう使うというのだ!




