《第754話》『もう二度と会いたくはないでしょう』
「いたた、た、た、た――」
吹き飛ばした方向まで様子を見ると、洞穴の壁より、ペスタ・エプティは這い出ようとしている最中だった。
アレを食らって、壁にめり込んでおいて、足をぶつけましたよ程度の感想だと? 冗談は止してくれ。そして見た目は実際に砂埃が付いた程度の変化しかないのだから、本気で冗談は止してほしい。
なんだ、この底知れない化け物は?
「むぅ、よもや喰らってしまうとは。お見事です」
「――こちらとしては、多対一でこれだけやってようやく一発入れられた、ということに非常に不本意かつ信じがたい光景なのだが」
多数のしもべを危険に曝してなど、本来あってはならない。そんなリスクを冒したというのに、ダメージさえもまともに入っていないのだ。
今、全力で妾は。どうすべきか考えを巡らせていた。
ヤツの目論見が今破綻しているとはいえ、次にどんな手で出てくるか、分かったものではない。これ以上は勘弁してほしいが、現実はそうは――、
「――仕方ないですね」
「――っ、」
「一度引くとしましょう、ここは」
しかし、予想に反し。ペスタ・エプティは撤退を意味する発言をした。
「分からないですし。もう一人のターゲットがどこへ行ったのか。崩壊も失敗してしまいました。組織の」
「…………」
「これ以上意味はありません。ここにいることは」
「――そうか」
「もう一つ、それと」
「っ、今度は何だ?」
「面白そうなので、将来が」
「――どう言うことだ?」
意味の分からないことを宣うと、ペスタ・エプティは立ち上がり、そのまま歩いて出口へと向かってしまった。振り返ることは無く、何故か鋏を背負ったままスキップまでして。
……――どっっっっっっっっっっっっっっっっっっと、疲れた。




