《第750話》『劣勢』
ガキィンと、二つの刃が妾の放った妖気とぶつかり合う。
妾は妖気を一本の棒、あるいは剣のように固めて扱い、そしてそれは多大な熱を持って相手を焼き切る代物である。
――しかし、この妖気剣で両断できなかったのは、今まで駄狐の剣くらいのものだった。
それを、この女は――ッ、
「思いついたんですよ、いいことを。私は」
二本の刃に分割された元・鋏。長大な剣を、まさしく棒きれのように軽々振り回し、ペスタ・エプティは切り結んでくる。
「殺してはいけない。死ななきゃいいんですよ、要するに」
消えた。後ろ――ッ!
「半殺し、ですかね。いわゆる。依頼は達成できます、行動を阻害されることは無くなりますし、そうすれば」
身を屈めると、すぐ頭上でバツンと、鋏の閉じる音が鳴――、
横から払われた極太の大剣を、妖気剣で受け止――、
対応を構えた反対側より迫る気配。打ち払ってみれば、それは二つの「クローバー」の刃。
その直後、部屋の外合計6箇所より、質の良く分からないビームが取り囲むように照射される。これは「スペード」によるものか。
「狂鬼姫様ァ!」
零坐は、念動力を直接ぶつけてビームを相殺させた。自らに「ダイヤ」が突っ込んできているというのに、妾の身を優先したのだ。
「まず自分の身を守ってから手を出せ!」
鬼火玉を放ち「ダイヤ」を撃ち落とす。しもべを容易く犠牲にするつもりは――、
「まずは頂きますね。両腕を」
「っ、」
目の前。双剣を下方より振り上げるペスタ。それは宣言通り、妾の両肩を目指している。
「…………」
「あら」
その攻撃を、静菱はヤツの腕に髪を撒きつけることで止めてくれた。妾は動きの鈍ったペスタへと、拳を叩きこ――、
「ならば」
離れた位置に出現するペスタ。大剣を振りかぶると、大きく振るい下を薙ぎ払った。
地面が、瓦礫と共に浮き上がる。




