《第747話》『横から失礼』
「お思いですか? それをさせると」
「貴様が手を下すので済むのだったら、最初からしていればよかっただろうに」
さて、いかにしたものか。こう息つく暇もなく攻め立てられている状況では、空間転移も対応に使うので精一杯だ。
「隠密で、直接的な介在なく、と言うことでしたので。可能な限り」
「この状況を見れば、冗談みたいな要求だな――! …………っ!?」
掴んでいたチェーンが、妾の身体に巻き付き腕ごと封じてくる。
「このようなモノ――!」
「隙あり、ですよ」
目の前から消えたペスタは、鋏を広げて樹那佐 夜貴の真横に立っていた。
その首には、刃がかかっている――、
「ぬっ、この――ッ!」
チェーンを破ろうと試みる。が、信じがたいことに、妾の力を持ってしても、それを破ることはかなわなかった。
鋏が、ばつん、と。音を立てて閉じられる――……、
「…………!」
だが、鋏は空を切っていた。
「髪――!?」
「わ、わ、わわわっ、わ!?」
気がつくと、樹那佐 夜貴の身体には黒髪が巻き付いていた。そのまま振り回し、部屋の外へと投げ飛ばしてしまう。
その髪は、まさしく静菱のモノだった。
「静菱!? お前――」
妾の意志を読み取ってくれたのか! と、普段意味の分からないことばかり言って無礼ばかり働く引きこもりに、少し感動を覚えていた――のだが、
「…………」
「あ、何? そこに居られると未来が変わってしまいそうな気がした? なんのこっちゃ? タイムパトロールでもやっているのか貴様は!?」
相変わらず、意味が解らなかった。とは言え、
「おや、おや――」
「さて、行かせぬつもりが無いのは分かっているな? 今度は立場逆転だファンタジー女」
「変わらないと思うのですが、結局。あなたが釘付けにされているのは」




