《第七十三話》『少し遠い日のおもひで』
「だいたい、何故今の家にはこいつが置いていないのだ! どうして持ってゆかなかった!」
「わ、妾は、夜貴と生きると決めた時に、全てを置いてくることにしたのだ!」
呉葉の決意は、かなり強いモノだったことを覚えている。だけど、テレビゲームもそれに含まれてたんだね――。
「それにしたって、これは関係ないだろう!」
「貴様に初めてのテレビゲームを泣く泣く手放さざるを得ない状況の気持ちが分かってたまるか!」
「きょ、狂鬼姫様方、落ち着いて――それで、わたくしめまで連れてきて、いったい何をなさるのですか?」
「おお、そうだったそうだった!」
幻影の呉葉は小走りにテレビ横の箱へと向かい、何かを探し始める。
「ファミ○ンやス○ファミでは同時プレイ人数が足りないから、やはりロク○ン――いや、プレ○テでもいいか。だが、ここは……、」
ゴソゴソ、ゴソゴソ、
「あった! 妾が初めてプレイしたゲーム!」
「ううむ、すこぶる懐かしいな」
「――いつのゲーム?」
「ゲーム事態は1997年だが、妾が遊んだのは確か1999年だったはずだ」
「浅い!? 平安時代から生きてるはずなのに『懐かしい』がすごく浅い!」
「おい人間! 狂鬼姫様を愚弄するか!」
突然怒り出した零坐さんに押されつつも、幻影の呉葉が「ゼロゼロ」と「セブン」と書かれている箱からソフトを出すのを横目で見る。その姿は、妙にウキウキしており、見ているこっちもなんだかうれしくなる。
「ふーっ、ふーっ、」
「起動できぬ時にやるそれは、本当はよくないらしいぞ」
「何っ、それは本当か!?」
テレビをつけてからカセットに四苦八苦するする二人の呉葉。なんのかんのしてから、ようやく画面が表示された。
「さあそこの二人! 貴様らも共にプレイするぞ!?」
「「えっ、僕 (わたくしめ)も!?」」




