《第738話》『13枚のカード』
妾は防がれたことにめげず、再度打撃を繰り出した。
あらゆる角度から超速で入れられる拳に、静菱は髪の毛の束で対応してみせる。が、妾は知っている。奴は対応しきれない、と。
しかし、その穴を埋めるように、「ハート」が――トランプのハートマークが割って入り、こちらの攻撃を止める。多少大怪我せぬよう手を抜いているとはいえ、なんと頑丈な「ハート」なんだ、罅すら入らんぞ!
「…………」
「これは何だ、だと? 知るか! 貴様に同じ問い掛けをしてやりたいわ!」
「…………」
「知らないなら知らないで、いったん中断せんか! 状況を疑問に思え!」
「…………」
「何を下剋上狙っとるんだ貴様は!? 誰のものとも知れぬ助けなどで勝って嬉しいのか!」
「…………」
鬼火で周囲からの髪の毛を薙ぎつつ、拳を振るうも、どれ一つとしてこちらの攻撃が届かない。
こうなれば、「ハート」をぶち抜くつもりで殴りつけるしか――……、
「うわぁあああああああああああああああああああああああああっっ!!?」
「――っ!?」
叫び声。右を見ると、髪の毛で足を掴まれた樹那佐 夜貴が飛んできた。
「お前はなんと言うところから飛んで――」
「っ、危ないッ!」
「何!? もがっ!」
樹那佐 夜貴を受け止めたその直後、妾の視界を髪の毛が覆った!
「もご、もご、もがっ」
「…………」
絡めとられながらも、妾は思う。
誰かが、何かを企んでいる、と。
そしておそらく――これは序章に過ぎないに違いない。




