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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二十一章
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《第729話》『罠』

「っ、何だ――ッ」

「!!?」


 僕らの、丁度真上の天上が、バキバキと音を立てて崩れてくる。

 それは、何の前触れもなく突然起こった。流石に天井を見ていたわけではないが、傷んでいた、などと言うことは無いだろう。

 木の板、木片が、降り注いでくる――……、


「馬鹿者、そのまま頭を打ち付けるつもりか」

「――?」


 しかし、痛みはない。気がつけば、呉葉さんが僕に密着、覆いかぶさっていた。

 素直に、お礼を言いたい。――けれども、身を挺す程、大袈裟と言う様子も……、


「誰の仕業か知らんが、岩を落としおった」

「えっ、岩!?」


 起き上がる呉葉さんの後頭部から、何かがゴロゴロと転がり畳の上に制止する。

 それは、見紛うことなく岩だった。一抱えほどの、いかにも重そうな物体だ。――断崖であれば、違和感はなかっただろう。


「――って、だ、大丈夫なのそんなの受けて!?」

「妖怪を舐めるでない。こんな岩ごときでは、瘤すらできん。――っ!」


 そう言う呉葉さんは、突然の一瞬、顔をしかめた。

 それは、まさにいきなり走った痛みに思わず表情を変えてしまった、と言うような。


「ほ、ホントに大丈夫?」

「今のはちょっと虫歯が痛んだだけだ。後頭部などではないぞ」

「虫歯!? いや、でも――」

「何なら頭を確認してみるか?」


 そう言って呉葉さんは僕に後ろを向けると、長く白い髪をまくって見せた。

 うなじ。絹の糸のような艶やかな髪の生え際。シミ一つなく綺麗な、きめ細やかでミルクのような色合いの首筋。


「…………」

「ほれ、何ともなっておらぬだろう?」

「え、あ、う、うん、そうだね」

「どした?」

「い、いや、何でもない、よ?」


 ――何だろう。今、ちょっとどきっとした。気がする。なんだろう、この気持ち。


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