《第七十二話》『時代劇コメディ』
「さて、零坐の語りがあらかた終わったところで、妾がここへ来たいと言った理由を、そろそろ説明せねばなるまいな?」
「正解は教えてくださらないのですか狂鬼姫様!?」
テキトーに扱われているように見えるあたり、少しだけ零坐さんがかわいそうに見える。というか、さっきから微妙に「個人」として扱っていないような――。
「ひとまず、全員ついて来い」
その指示に従い、僕ら三人は幻影の呉葉について屋敷の奥へと進んだ。明治時代のような内装から、江戸時代、室町時代と、少しずつ古い様式へと変化していく廊下。
「――おい貴様。まさかここへ来た理由と言うのは……」
「ふふん、その通りだ。黙ってついて来い」
10分程歩き続け、平安時代を思わせる広い一室で彼女は足を止めた。
「ここだ!」
「うわ、一段高い位置にテレビ置いてある!?」
平安貴族の偉い人が、よく御簾の向こうで話しているような段の上に、とんでもなく大きな画面のテレビが配置されていた。
「ここは妾のゲーム部屋だ」
「ミスマッチな光景にもほどがあるよ!?」
だが、確かによく見てみれば、その見たこともない巨大なテレビから伸びる配線の先に、古いゲーム機らしきものがつながっていた。――ウチには置いていないタイプだ。
「ねぇ、もしかして昔呉葉のここへ来た理由って――」
「――うむ、間違いなくテレビゲームしたかっただけだ」
幻影の呉葉の代わりに、現在の呉葉が頭を抱えあきれ顔でそう答えた。




