《第727話》『何、ただの会話、と言うヤツだ』
元の宴会場(?)に戻って来た僕ら。いつの間にか、僕らを取り囲んでいた女性らはいなくなり、今はこのだだっぴろい部屋の中。未だたくさん残っている料理群を前に、呉葉さんと二人きりで座っている。
「樹那佐 夜貴。あなたは、闇に息づく者、世界の裏側を住処とする者、それらをどう思われまス?」
「え、っと――?」
藪から棒に。この娘は、何を――?
「素直に思っていることを言っていただいて構いませン。その答えでどうこう、と言う事はしませンし、できない」
「…………」
呉葉さんは、手羽先を解体しながらそう続ける。「む? どうやるのだったか――」などと、雰囲気自体は食事中の会話そのものだ。
「僕、は――」
「ふむ――じゃなかった、はイ」
「そんな無理して丁寧な言葉使わなくてもいいよ――」
「なにっ、悟られていたか」
「だってイントネーションおかしいし」
「妾の演技を見抜くとは、なかなかやるな」
「誰でもわかると思います!」
呉葉さんはんぐぐっと咳払い。
「――で、どうなんだ? 先ほど言った通り、妾は別に、その答えが何であろうとお前をどうこうするつもりはない」
「じゃあ、なんで聞くの? ここは、その――」
「ああ。妖怪や異能持ちの巣窟だ。そして、そこにいる奴が、それらに対する印象の何を言われようとも怒らぬ、と言うのは、まあ、不思議だろうな」
無理するなと言ったためだろうか、それは態度にもより顕著に出始めている。お酒を飲み、料理を食べ。しかし、そのどれもが普通の人間の仕草から逸脱したモノではない。
「別に、何のことは無い。ただ、思っていることを聞きたいだけだ。ただの、雑談の一幕のようにでも思ってほしい」




