表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第二十一章
727/1022

《第726話》『零坐の用意していた暗殺者』

「な、何ィ! 来れないですとォ!?」


 わたくし零坐。突然のドタキャンで思わず叫ぶ。街のど真ん中で、思いっきり。


『ちょぉーっと今、ハワイ旅行中なんだわ』

「日時はあらかじめ伝えておいたでしょォがァ! あんた阿呆すぎやしないですかァ!」

『いやァ、ちょっと行きたくなってな』


 わたくしは、底から。こころの底から、重たい重たぁ~い溜息をついた。

 送り込まれた敵を殺すのに、わたくしは狂鬼姫四天王(相変わらず妙な名前だ)の中で最も戦闘能力の高い剣奉殿にお願いをした。あの、アロハシャツのジジイだ。


『なんだ、いかんのかよ?』

「むしろなぜよいと思ったッ!? 下手に出ていればいい気になりおって! 狂鬼姫様の安全が! 威厳が!」

『んな大袈裟な』


 暗殺者が来ているというのに、何をのんきに言っているんだこのアロハジジィ! 大袈裟も何も、それ以上によろしくないことがあるわけがない。


『お前は心配しすぎなんだよ』

「貴様はのんき過ぎだッ!」

『いや、考えてもみろ。あの狂鬼姫だぞ?』


 剣奉は、今まさにくつろいでいる、と言った様子の声が電話の向こうから聞こえてくる。


『殺しても死なんし、威厳だとかなんだとか、そう言うツマランものを越えた何かの上に、ヤツは立っている女だぜ?』

「は、はぁ――?」

『ヤツが、自分で考えがあってやっているのだろう? なら大丈夫だと思うが』

「だ、だが――」


 一族代々、生まれてからずっと仕えてきた身として。お前に何が分かる。そんな気持ちが、わたくしの中で渦を巻く。


『儂は割とこの集まりに入って日が浅い身だが、それ以前に昔からヤツとは喧嘩する仲だったからな。それなりにわかる』

「…………」

『わざわざこんなモン、心配する程の事でもねぇ、と。アホやりつつも、どういうわけかひとりでに丸く収まりだす、ってな』


 その喧嘩する仲、と言うのは、わたくしが生まれる前から始まっていると聞く。――何気に、わたくしより付き合いが長いというのは、少し嫉妬を覚えなくもない。


「――あなた、なぜ狂鬼姫様の下に?」

『下についたつもりはない。が、ヤツの力のおかげで、いらん喧嘩は吹っかけられずに済む』


 儂は儂のやりたい喧嘩がしたい。だから、アイツの集まりの中にいる。

わたくしは、そう言われて電話を切られた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ