《第724話》『仕切り直し』
「――さて問おう」
うつ伏せ状態の僕。恐ろしい少女が去りゆいてから、呉葉と名乗る、見た目よりもはるかに強靭な少女が振り向いてくる。
「お前は、何のためにこの場所に現れた?」
「……――っ!」
僕の目に、先ほどまでの彼女の暴れっぷりが焼き付いている。
大鋏の少女もさることながら、力と技巧を駆使するその自称殺し屋を、文字通り力づくで拮抗、あるいはねじ伏せにかかっていく。
単なる小間使いでは、あり得ない力――彼女は、
「ぼ、僕、は――」
「…………」
睨み付ける様子はなく、飽くまで穏やかに見つめる赤い瞳。
しかし、纏う雰囲気に有無を言わせる様子はない。見る者全てを従わせる、絶対者のたたずまいがそこにある。
僕は、その瞳に射竦められ。自らの目的を――……、
「ふむ、そうか」
「っ、」
僕はびくりと、肩を震わせる。まるで、裁判長がジャッジ・ガベルを打ち鳴らすかのような、その一言に。
僕の方へと歩き迫る、白い女の子。僕は、自らの死を覚悟――、
「では、宴の再開としましょうカ!」
「えっ」
だが。また、小間使い――と本人は思っている態度に、少女は戻った。ぎこちない敬語と共に。




