《第721話》『いつの間に妾は自分の計画にパンチかましていたのだろう』
妾は、目の前の「ペスタ」と名乗った少女を睨む。
互いの攻防から一転、硬直へ。差し合いとしては妾がやや有利で、空間転移もある今それはゆるぎない。
――だが、奴も奴で、突然開いた鋏以上にまだ、何かを隠し持っている予感がする。
「それならそれで、このあたりで暴れるのをやめてもらいたいところなのだが」
「すぐにやめますよ。どこの誰とも知れぬ方たるあなたが邪魔をしなければ」
「妾のことを知らずに殴り合っていたと言うのか。ならば教えてやろう、妾は――」
と言ったところで、はっと視線に気がつく。それは突然現れたペスタと言う女の後方でうつ伏せ状態の使者、樹那佐 夜貴のものだ。
現在、妾はこの使者に対して正体を隠している。正直、先ほどまでそれを忘れて暴言吐いたりしていた気がしたが、バレるとややこしくなるため明かすわけにはいかないのだ。
「わ、妾は――、」
「――?」
「た、ただの小間使いですワ! オホホホホ!」
「…………」
「…………」
何だ、この超・イッタイ沈黙!
「無理があると思います。数秒前に会ったばかりの私ですら」
「僕も、君がただ者じゃないという事はなんとなく――」
「ガッデム!」
何と言うことだ、これでは妾が妾自身で妾の考えた作戦を粉砕しているようではないか! 妾!
「――どうしましょうか? このままでは埒が空きません」
「だから、早々に立ち去れと――」
「致し方ありませんね」
「お、案外物分かりのよい――、」
「お亡くなり頂き願いましょう。致し方ないので」




