《第718話》『にわにはにわにわとりがいない』
妾は、その一室の襖を開け放った。
「見るがいい――これが、妾の庭だッッ!!」
庭……広大な屋敷の中にある一室。広さは12畳程度のその部屋の戸棚に、押し入れに。これでもかと押し込めた、1000年余りの歴史達。
それはちょっとした遊びのための小道具だったり。はたまた面白い絡繰だったり。
文字通り、狂鬼姫たる妾の遊戯――もとい、暇潰し。もとい、完全に娯楽のために、収集された器物の数々、その一部がここに集められているのだ。
――ちなみに、最近引っ張り出していないモノが大半である。虫食いとか大丈夫だろうな。……多分大丈夫だろう。
「庭って、君はいったい――」
「さあ、遊ぶことも知らぬ若人よ! ここに座れ!」
「えっ、は、はい?」
机の前の座布団に、半ば強引に座らせる。その上には三つの画面が。全て、最新型PCへと繋がっている。
「一体、何を――」
「待っているがいい。今、丁度良さそうなギャルゲーを起動させる」
「ギャルゲー!? 何ですかそれ!? 何語!?」
「男主人公が女の子達ときゃっきゃうふふするゲームの総称だ」
「それを今やらされる流れっぽく見えるんだけど!? どうして!?」
「青春を学ばせてやろうと言う妾の計らいだ!」
「なんとなくだけど実際のモノとは幾分異なりそうに思えるんだけど!?」
「つべこべ言うな! 遊べ! やれ! 学べ!」
妾はそう言いつつ、一つのゲームを起動させる。
いわゆる、青春モノ。学校を舞台に繰り広げられる、ドタバタコメディチックのギャルゲーだ。今どきの十代はこんな青春を送っているとは、何と羨ましい限りだ!
青春。妾には無かった、そんな時期。今は遠い昔。
もう戻ること等不可能なあの瞬間に想いを馳せている時――事件は起こった。




