《第717話》『そんなこと言われても!』
「え、趣味ないの?」
「そ、そうだけど――?」
僕は別に、おかしなことを言った気はまるでなかった。だから、聞き返されることはまるで想定していなかったのである。
しかし、彼女にとっては違うようで――、
「な、何かありますでしょウ! 読書とか、カラオケとか!」
「ううん、本は読まないし、別に歌も――」
「せめてお酒とか!」
「さっきから思ってるけど僕は未成年です!」
「仕事から帰ったら何をしているんだ!?」
「べ、勉強、かな――? 後はニュース見たり……」
「お、」
「お?」
「お前は独身中年のサラリーマンか!?」
「君ちょくちょく一部の層を馬鹿にするね!?」
独身中年のサラリーマンだって趣味のあるヒトはいるし、むしろそちらが生活の軸になっているヒトもいると思う!
多分見ている人がいたら全力で怒られているに違いない。
「やかましいわ! 若いのだろう!? 見た感じまた10代なのだろう!? 何でその歳で家と職場を行き来するだけの生活をしているのだ! 妾涙ちょちょぎれるぞ!」
「お、落ち着いて――なんで君が泣くの……!?」
いや、実際泣いているわけではないけど。――と言うか、何か直前と口調違くないですかこのヒト、いや、妖怪。
「よし立て樹那佐 夜貴!」
「え? え?」
「ええい、立たんかっ!」
小さな身体のどこにそんな力があるのか、引っ張り上げられて無理やり立たされ、手を引かれる。
「この妾が、遊びと言うモノを教えてやる!」




