《第七十話》『薬局は近場にございません』
「なんですか? 発言権の無い癖に口を開くとは」
「そ、そこまで言わなくてもいいじゃないですか――っ」
「全くお前ら――ならばとりあえず、夜貴から話してみるといい」
「えっと、ううん――僕は後でいいよ」
「なんだ、結局喋らないのですか? だったら最初から、声を出さないでいただけますかな?」
「う、うぅ――辛辣すぎるよ……」
「それでですね、とりあえず私が狂鬼姫様方にお伺いしたいことと言うのはですね――その、どうして、お二人に増えられたりしたのですか?」
――確かに、彼にとってはそれが今一番気になっているかもしれない。ううん、正直に答えたらまた僕が睨まれそう……。
「逆に聞こう。何故だと思う?」
とは、現代の呉葉。
「え、いや、何故って、そんな、わたくしめに想像がつくはずないではありませんか――!?」
「命令だ。答えて見せよ」
「い、今までお仕えしてきた中でも上位に位置するレベルの難題――!? そんな、無茶を仰らないでくださいよ!?」
「ふーん、そうなんだー。妾の命令に逆らっちゃうんだー。へー」
「ひ、ひぃっ!?」
――かと言って、ちょっとこれはかわいそうな気もする。呉葉はニヤニヤしているように見えて、その目は全く笑っていない。
「こらこら、現在の妾。そんな意地悪をするものではなかろう」
「きょ、狂鬼姫様――っ!」
「――で、何故だと思う?」
「狂鬼姫様ァ!?」
うわぁ、幻影の呉葉まで攻撃に回った――。こっちはこっちで、完全にからかい目的だというのが、その目で分かる。
「も、もう、二人とも! その辺にしておいてあげてよ!?」
「む、何故だ夜貴。お前を困らせたこの不届きジジイには、同じ、いや、それ以上の報いを受けてもらわねばならぬ」
「だ、だからって――もぉーっ!」
「くははっ、お前は優しいなぁ。何、こいつとは違い、妾はただからかっただけだ」
不満げな現在の呉葉、僕までもをからかいの対象にしようとする幻影の呉葉。そして――、
「折角必死で答えをひねりだそうとしておりましたのに、余計なことを――ッ」
手助けしたつもりが、僕を思いっきりにらんでくる零坐さん。
――胃薬、途中で買っておくべきだったかな?




