《第708話》『未成年の飲酒は(ry』
「っ、ちょっと待てあいつこっち来るぞ!?」
使者は突然立ち上がったかと思うと、口元を押さえながらこちらへ向かってくる。
「ど、どどど、どうすれば!?」
「や、殺りますか!?」
「殺るな!?」
「ですがかくなる上は!」
「ええいお前はもう口を挟むな!」
「ほげろっほォッ!?」
零坐を殴り飛ばし、空間転移の穴へ放り込む。行先はテキトー。ごちゃごちゃやかましいからこうなるのだ!
かったん!
「何?」
「えっ、」
――と、アレコレやっていたら。そんな間に使者がふすまを開けてしまった。
「え、え――っ、と……、」
「あー、あー……、」
お互いの視線と視線が交錯する。黒々とした、まるで黒曜石を思わせるような瞳。それが、妾の紅玉のような瞳を映している。
そのまま、じーっと見つめ合い。まるで、この空間だけが切り取られたかのように、時間の流れに変化が生じている気さえする沈黙。
――って、目と目が合う、などとやっている時ではないではないか!
今回の作戦、妾は出るつもりなどなかった! 出ればまたややこしいことになることが、目に見えていたからだ!
緊急時ならばまた話は変わるが、計画通りに進んでいる状況に、そんな無駄に引っ掻き回す状況は必要ない! だのになんだ、どうしてこうなったのだ!
と言うか、零坐を別の場所に転移させて気がついたが、こちらへ向かってきた時点で、妾も跳べばよかったではないか! パニックに陥って、そんなことを失念してしまうとは!
ど、どうする!? 如何にして切り抜ける、この状況――、
「…………」
「え、ええっと、」
「う゛ぶっっ!!」
「あ――?」
――もう一度後悔。どうして、空間転移で跳躍しなかった。




