《第707話》『未成年の飲酒は絶対にやめましょう』
「お客様ぁん♪ わたしのお寿司を食・べ・て♪」
「ほらよ、神〇牛のステーキだ。べ、別に俺はお前のために持ってきたわけじゃないんだからな!」
「お兄ちゃん! あたしのお魚も食べてね!」
「お客様、主人の好物だった煮物です」
「ボ、ボクの用意したケーキも食べてほしいかな、なんて――」
一体何? 何なの!? 何なのコレ!!?
もはや迫られ、考えることもままならない。彼女らが一度にいろんな食べ物を持ってくるせいで、全く、全くと言っていい程何もできない。
「我の酒じゃ! 飲め!」
「ぼ、僕未成年です!」
「ならば儂のを!」
「そう言う問題じゃないって!」
「えぇーいっ、細かいことをぐちぐちと!」
「もがっ!?」
敵――敵? の攻撃を受け、僕の口には液体が流し込まれる。熱い、喉が焼けるような、特有の風味のあるそれが、喉を抜けてゆく。
始めて飲んでみたが、これがお酒と言うものなのだろう。それはあっという間に下まで落ち、腹を一瞬にして熱くさせる。
まるで、溶岩を流し込まれているかのよう。しかし、それと明らかに違うのは、その熱が頭にまで一気に登る点で――、
「うぷっ!?」
突然立ち上がる僕。周りの人たちが、一斉に怪訝な顔をする。
「と、といれ――っ」
眩暈にも似た何かが頭を直撃した跡、胃が引っくり返るような感覚と共に、口元へ何かが戻ってくる。
明らかに、それは嘔吐感。こんなところでやらかすわけにはいかないと、混乱しているせいでそれを処理すること以外頭になくなってしまった僕は、よくわかりもしていない狂鬼姫の屋敷で、ふすまの方へと駆ける。
そう、僕は今トイレを求めていた。果てしない程に。




