《第705話》『動けない――ッ』
幼女から大人まで。背の低いヒトから大きなヒトまで。痩せたヒトから太ったヒトまで。胸の小さいヒトから大きいヒトまで。様々な、実に様々な容姿の女のヒトが、まるで津波か何かのように押し寄せてくる。
「わぁ~っしょい! わぁ~っしょい!」
「わ、あ、あっ、やめ――!」
そして、何故か胴上げ。それをされながら、そのままなすすべなく、建物の中へと僕は運ばれて行ってしまう。
――ぶっちゃけ、マズイ事態である。
彼らからは、皆一様に妖気を感じる。それこそ大なり小なりあるようだが、つまりそれは全員が妖怪か、それに限りなく近い存在であることの証である。
つまり、今の僕の立場からすれば敵。なので、退魔札を使って払っておきたいところなのであるが――、
「わ、ふ、ふだっ、わ、わぁ――!」
こう、ぽんぽん上にあげられたりすると、取り出そうにもうまく手が動かせないわけで。
つまるところ、仕掛けられていた罠(?)に嵌められた形になる。
そうして僕は運ばれて行ってしまう。屋敷の入り口は大きく、胴上げされたままでも問題なく運ばれてしまう。
「お客様ぁ! こちらにお座りくださぁい!」
「うわっ」
そして、僕はぽいっと放り投げられる。
「い、いたたたた、た――ここ、は……?」
正直言って、僕はこの時点で覚悟を決めていた。
反撃できない。手玉に取られている。もはやこの時点で詰んだも同然なのは明白。
きっと僕が運ばれたのは、処刑部屋の類。このまま、日の光を拝むことは二度とないと、
そう、思っていた。
「ま、満漢全席――!?」
大きな部屋。目の前に広がる無数のお膳と、その上に乗せられたいろんな、それこそ、いろんな国籍の料理の数々。
――戦うために来たのに、正直意味が分からなかった。




