《第六話》『なんだかんだあっても結局――』
「う――う、う……」
「ふむ、目覚めたか夜貴」
頭のつまった、少しぼんやりした気分に、僕は目を覚ます。すると、呉葉が苦笑いしながら僕を見つめていた。
今、僕は寝室に寝かされているようだった。最後の記憶は風呂場だったが、この様子から、運んでくれた上に服も着せてくれたようだ。
「えっと――僕は……?」
「鼻血噴いて風呂場で倒れた」
「あ、は、ははっ、ごめん」
「気にすることはない。と言うより、妾が原因であるからな。それに――」
「――それに?」
「隅々まで堪能しながら洗ってやれたからな♪」
「僕の貞操が――っ」
いつも思うことだが、この鬼はぐいぐいと来すぎではなかろうか? いわゆる、肉食系女子である。だが、いくらなんでも刺激の強いイジワルが多い気がする。
だけど――、
「今日はもうゆっくり休むといい。何気に出血量が多かったからな。今はあまり動かぬ方がよいだろう」
「呉葉のせいじゃないか――」
「うむ。だから、明日はお前にはたんとレバーを調理して食わせてやる。血を失った時は肝がよいからな」
「朝から中だけ焦げたレバーは勘弁してほしいかな――」
「安心しろ。今度は――きっと、うまく行く。……フフ」
「く、くすぐったいよ――」
「愛しいのだから仕方ない」
今こうやって頭を撫でる手が優しいから、やっぱり僕は呉葉が好きなんだよなぁ。