《第691話》『こんなの一体どうすればよいのじゃ――』
純粋に。余、ヤバいと思った。
狂鬼姫の力、もとい腕力は充分分かっていたつもりだったが、飛んでくる球がまるで目で追えないとは思ってもみなかったのだ。
余は、どう対応したモノかを考える。どうすれば、あのふざけたパワーに対抗できるのかを。
「おい駄狐! 何をぼけっとしておるのだ! 早く始めぬか!」
「! ええい、貴様に言われるまでもないわ!」
強度を上げたという岩の塊に、妙な細工は見られない。いかに狂鬼姫であろうとも、妖術に長けた大妖怪・九尾の狐が、それを見破れぬハズがない。
「行くぞ間抜けな鬼神共ォ!」
「誰が間抜けか! それは貴様だ駄狐!」
岩を、下から打ちあげる。岩の癖に、思いの外弾力のあるそれは、中央の網を越え、狂鬼姫共のところへ――、
「トス!」
「よし――!」
狂鬼姫――本物の方が、高く跳び上がる。先ほどのように、高く。高く。高く。
「死ねぇええええええええええええええええええええええええええっっ!!」
打ち出された球。
それは狂鬼姫の拳によって、一瞬たわんだそれは。
「「どぉわぁああああああああああああああああああああああああああっっ!!」」
錐を豆腐に叩きつけるかのごとく、砂の大地を深々と破壊した。




