《第690話》『炸裂した結果――!』
「えーっと――」
「相手コートに入ったから、妾の一点だな!」
僕らの視線が集中するのは、鳴狐側のコートにおいてぺちゃんと潰れたビニール。もとい、元ビーチボール。
上空へと舞い上がったそれを、呉葉は思いっきり相手コートに叩きつけたのだが――そりゃあ、鬼神の腕力で叩けばそうなるというもので。
「――仕切りなおそっか」
「なぜだ!? ボールは相手コートに入っただろう!」
「肝心のボールが潰れちゃ、返せるものも返せないよ!」
空気が込められているからこそ、打って返せるわけで。どうあっても返しようのないボールでは、試合にならない。むしろ、反則負けにならないのが温情と言ってもいいくらいだ。
「しかし、それでは一生試合が終わらんぞ? 妾や駄狐の身体能力では、ボールが潰れない程度の緩い力でやりあっても、ほぼ必ず対応できる」
「だよ、ね――」
そう考えると、ビーチバレーはあまり二人の勝負に向いていないような気がしてきた。最初に提案したのは呉葉だけど、どうするつもりだったんだろう。
――まさか、萎びた皮みたいなボールを打ち合うつもりで……? 案外、あり得なくもなさそうだから困る。
「妾にいい考えがあるぞ」
「偽物――?」
「まずは、これを用意する」
そう言って、狂鬼姫は空間転移で何かを取り出した。
「岩!?」
それも、ビーチボールとほぼ同等サイズ。
「これを、ちょいと妖力で覆ってだな――これで、そう簡単に壊れることの無いボールが出来上がった」
「イシツブテ合戦みたいだな。ふむ、それはそれで悪くない」
「悪いよ!? 岩である必要あるの!?」
「なぁに、ギャグ時空+大妖怪だ、まず死なぬし、怪我をしても次の回には治っている」
「もう一人の呉葉は呉葉以上に言動が分からないよ!」
「おい駄狐、それで構わんか?」
「ん? あ、ああ」
「どうした、先ほどからダンマリで」
「怖気づいたか?」
「あ、アホを言うでない! 余が貴様を恐れるなど――!」
「天地が引っくり返っても、有り得ぬことじゃ!」




