《第684話》『子供の喧嘩』
「呉葉ぁ――……、」
「なんだ、妾はただこの駄狐を成敗――」
「呉葉」
「うっ、むぅ――」
強く言われると、流石に呉葉も反省――したかどうかはともかく、不満げに頬を膨らませるだけで、それ以上何かしようとはしなかった。不意打ち気味にヒト――狐の頭で西瓜割りとは、油断も隙もない。
「競い事で勝敗を決めると言ったが、流石に今のは一発殴り返さねば気が済まぬぞえ!」
「押さえて押さえて――」
「押さえられぬといっておうじゃろう!」
「見た目しっかり大人なんだから、そうすべきところは穏便に――!」
「言動の合間を縫って妾をディスるでない!?」
とは言え、どうするべきだろう。パッと思いつく方法がないわけなのだが。
この前の呉葉と冀羅の戦いを見て、必ずしもそれが戦闘である必要が無いということから思いついた策なのだが。
「ここは水泳じゃろ。海じゃし」
「水泳、ねぇ――」
「いや、ビーチバレーだな」
「鳴狐はルールしらないでしょー」
「びーちばれーとはアレじゃろ? 球を撃ち合って、それぞれの陣地で落とした方が負けじゃと言う」
「知ってんの!?」
「大妖狐たる余を舐めるなよ? くっくっく」
僕が思うのは、一回でこの二人が納得するのか、と言うことだ。互いを敵視、ライバル視しているため、直感ではあるが、ただの一度で納得できる未来が見えない。
「――じゃあこうしよう。今から僕が提示するゲーム三つ、それで先に二勝したほうが勝ち、と言う事で」
「正直言うと、それで決めるより直接戦って叩き潰したいところなのであるが」
「それをするとこの辺り一帯が焦土になるから――」
「むぅ――し、しかしだな、こいつはいつか人間にとって仇名すヤツなのだぞ?」
「ふふん、狂鬼姫。逃げるのかえ?」
「貴様なぜか突然物分かりがよくなりおったな!?」
「余は大人じゃからのう! どこぞのエセ鬼神と違って!」
「なにおう!? いいだろう、貴様は如何なる分野とて妾には勝てぬことを教えてやるわァ!」
こうして、海岸を舞台に二人の大妖怪の勝負が始まった。
――さっきよりはマシ……なハズ。




