《第683話》『夏の風物詩』
全裸を曝すことになったり、呉葉と鳴狐が二人絡まって砂まみれになったりしたが、とりあえず事態は収まった。
けれども、相変わらず睨み合いは続いている。
「あいすの怨み、忘れるものか――! 末代まで祟ってやるからのう……っ」
「何だと、まだやるか――ッ」
「貴様が血を見ることを望んでいるからじゃ!」
「それを望んでいるのは貴様だろうが!」
「ま、待った待った!」
折角一度は収束したのに、また始まってはたまったモノじゃない。
今回の事態、海水を(一応低気圧ごと)何故か鳴狐の方へと送った呉葉に100%非がある。
だが、謝れと言って、特に鳴狐に対しては謝るはずの無い呉葉。ここは、両者それなりに納得のいきそうな方法で場を収めてもらう他ない。
「ここは一つ、ルールに乗っ取った勝負で、決着をつけない?」
「ルール?」
「そうだよ。はっきり言って、僕としても二人が傷つくのは嫌だし」
「人間風情が、余を気遣おうと言うのかえ?」
「あはは――でも、決着をつけるのに、原因が食べ物なのは君も納得いかないんじゃない?」
「むぅ」
「――夜貴、して勝負のルールとはなんだ?」
「あ――ごめん、まだ決めてない」
「ふむ、そうか――」
呉葉は顎に手を当て、何事か考え始める。
「よし駄狐、西瓜割りにしよう」
「待て狂鬼姫、勝手に――」
「お前西瓜な」
呉葉が指を鳴らすと、鳴狐が突然砂に埋まった。頭だけ出したままで。
「き、貴様いきなりなにを――!」
「そぉ、れッッ!!」
そして、どこからともなく取り出した棒を、砂浜から出ている鳴狐の頭めがけて振り下ろした。
――直前で鳴狐は跳びだし、砂浜は砂飛沫を大きく上げて抉れ飛ぶ。
「何する!?」
「ちっ、もう少しで叩き割れたというのに」




