《第682話》『鬼と狐と脱衣』
どかーん! ぼこーん! と言う音が聞こえそう――と言うか実際に聞こえる中、僕は大妖怪二人をどのようにして止めようか必死に頭を巡らせていた。
「だいたい貴様はいつもそうじゃ! 唐突に余に厄災をもたらしよる!」
「貴様はその原因の90%が己のドジだと何故気がつかんのだァ!」
「今回は正真正銘貴様のせいじゃろうがァ!」
「うっさい黙れェ!」
周囲に人がいないのは幸いだが、それを差し引いてもこのままではいけない。
しかし、呉葉もそれが分かっているハズなのに、やめようとしないのは、頭に血が上っているせいだろうか。なんと言うか、鳴狐が絡むといつもこんな感じになる気がする。
一体、どうしたら――、
「コーハイ、ちょっとそのまま立ってな」
「え?」
背後から声が聞こえたかと思うと、僕の水着がずるりと引き下ろされた。
「!?!?!?!?!?」
突然の事態に思考停止。なだれ込んでくる情報の過多により、悲鳴すらあげられない。
「っ、夜貴!?」
そんな真っ白な頭の中で、交戦中の呉葉が驚愕を隠しもせずこちらを振り向いたのが分かった。
「っ! 隙ありゃあああああああああああああああああああっっ!!」
そんな呉葉に、容赦なく剣を振り下ろす鳴狐。
「あああァァ――――――………………あっ、」
しかし、その足がずぼっと砂浜に空いた穴にはまる。
「しまっ――何ィ!?」
「どわぁああああああああああああっっ!!」
鳴狐は勢いそのままに転倒。呉葉は迫りくる鳴狐に気がつくも時すでに遅し。
二人はもつれあうようにして――ごろごろずざざっと、砂浜に長い跡を引いた。
「あっはっはっはっは、おいたはアタシがいる限りさせないさ。んじゃ、またなコーハイ!」
そして、喧嘩が収まったにもかかわらず見れた状況とは程遠い状態を作り出したディア先輩は、僕の肩を一回叩いて、またどこかへ行ってしまった。
僕は、水着をおろされたまま思う。
――なにこれ?




