《第六十七話》『狂鬼姫の館』
「うむ。まあ、ちょっと寄っただけなのだがな」
「貴様がどうしてもと言うから、妾としては仕方なくだな――」
「こ、こんにちはー……」
「…………」
いったい何なのでございましょう? わたくしは狂鬼姫様恋しさに、幻でも見ているのでありましょうか?
「――で、お前が来たいというから来たが、どう言うつもりだ?」
「何のことはない。ちょっと、な」
い、いえ、この力の波動は狂鬼姫様に間違いありません! しかもお二人とも! ――そして……、
「ぼ、僕はここ、やっぱり苦手なんだけど――」
あの人間までセットではありませんか――。まったく、忌々しい……ッ!
というか、この狂鬼姫様が二人という珍事、よもやこの男の仕業ではありませんよね!? いったい何をしたんだこの男! ああっ!? 片方の狂鬼姫様と腕まで組まれてッ!?
「おい、そこの老人!」
「ふへっ!? は、はいっ!」
「今屋敷にいるのはお前だけか?」
「い、いえっ、ええと、わたくしめの他にあと10名程が――」
「まあいい。茶を出せ。三人分な」
「は、はいっ! かしこまりました!」
なんと言うことでしょう! 狂鬼姫様が、わたくしに声を! ――ではなくて!
要求された以上、速やかにわたくしは応えねばなりません。きっと狂鬼姫様達は客間へと向かわれるのでしょう。お茶を用意して持ってゆかねば!
――これは、チャンスですぞ!




