《第678話》『常習犯』
「ディア、『馬に蹴られろ』と罵倒してやろうか?」
「いやぁ、アタシとしても、アンタらを二人きりにしてやりたいとはね? そりゃね? 思ってるんですけどね?」
ディア先輩、いつの間に水着に着替えてたんだろう。
黒色一色の、シンプルなビキニ。しかし、それだけにお尻のラインから腰のくびれや胸の豊満さといったものがストレートに強調され。健康的な肌色からなるそれらは、突如として僕の心臓の鼓動を早め――、
「ディア、ちょっとタンマ」
「え?」
「夜貴」
「――えっ、な……あいたっ!?」
「妾を見ろ。妾だけを見ろ。妾以外を決して見るな」
「え? う、う、うん? うん」
突然、額にでこぴんをされてしまった。ぼーっとしてたので、呉葉がどうして突然そんなことを言いだしたかはわからないが、とりあえず頷いておくことにする。
「事務所のエアコン、ついさっき壊れちゃってね」
「えっ、この時期にそれは一大事では――?」
「ああ。そうなってくるとだね。ぶっちゃけ、扇風機なんざ温風送るだけで大して役に立たないわけで」
「それで、サボって海水浴ですか?」
「おうとも!」
「悪びれない笑顔が輝かしすぎないか!?」
「大丈夫! 今のアタシは事態収拾中だから!」
「営業回り中漫画喫茶で時間潰すサラリーマンみたいですね――」
時々出動する際も、そうやってサボってたりしているのだろうか。仕事中にお酒飲むヒトなので、割と頻繁にやっていそうである。
――面倒くさいことになりそうなので、僕は見ていないことにした。
「ま、アタシは適当に海に浸かってるからさ! アンタらは気にせず遊んでてくれ!」




