《第675話》『さんさんと降り注ぐ太陽の光の下で』
さてさて、と、夜貴が着替え終わったので、今度は妾が着替える番である。
ちなみに、夜貴の水着姿。無地の海水パンツと言うヒジョーにシンプルなモノなのであるが、それだけに本人そのモノの身体つきが引きたてられている。
十八歳男子にしては少々やせ形身体。色白で、そこに力強いイメージは微塵も感じず、有体に言えば貧弱めいたそれ。
だが、シミ一つなく、荒事に駆り出されたさいの傷も妾秘蔵の傷薬で跡無く治療したことで、滑らかかつ綺麗。
それはまるで、生きた彫刻と言っても相違ないだろう。触れれば折れてしまいそうなはかなさ。だがしかし、生きて存在しているのだと言う息遣い。
誰得だと? 妾得に決まってるではないか!
そして、そんな愛おしい相手を釘付けにするための水着を、今日は(次元の裂け目に)用意してある。
熟考に熟考を重ね、あーでもないこーでもないとお店で自分の身体と合わせながら考えて三日間。
スタイルがいいわけではないと自覚しているが、魅力がまるでないわけではないと自らを奮起させ――そうして選び抜いたのが、この白色のビキニ――パレオタイプ、というワケだ。
品の有るエロス、と言うモノを自分の中で模索した結果。胸部は誠に悲しいながら貧弱なので、敢えて脚部への露出を押さえ、布の隙間から出る足のチラリズムを狙った。
白色なのは妾自身の趣味と言うのもあるが、眩しさを演出し、健康的なイメージを狙った。
完璧! まさしく、完璧な仕上がり! 出来の程は120%!
着替え終わり、全体像を見せた時。夜貴のヤツはどんな反応を見せてくれるだろうか?
もしかすると、照れてしまって顔をそらしてしまうかもしれない。あるいは、鼻血――は言いすぎにしても、文字通りくらっとやってしまうかも!
そうやって、反応を想像しながらニヤニヤしながら――ばばっと、姿を現してやる! さあどうだ! 刮目せよ!
「綺麗――」
「え、あ――?」
「綺麗――だよ、呉葉」
静かに、しかし見惚れたように。まるで感動の溜息しか出ない、と言うような反応。
「お、おお、そ、そう、か」
「うん――」
想像していない方向性だったために、こちらがしどろもどろに。な、なんだその反応、もっと照れたり鼻血吹いたりすればよ、よいではないかっ!
「…………」
「…………」
互いに見つめ合って、完全停止状態。なんだこれは。どうすればいいのだ。
そのままそうやって、時間が過ぎてゆく。しかし、それはもどかしくなく、むしろ、心地よいとさえ――、
「アンタらちょぉっと待ったァッ!!」




