《第673話》『お山の大将』
「えええええらいこっちゃ! えらいこっちゃ!?」
「えーっと、ええっと、どうすれば、どうすれば――!」
あの巨大な波がどれほどの規模のモノかは、遠すぎてよくわからない。
が、横にあれだけ広く視認できる波が、小さいはずがなく。その脅威は明らかに強大であるに違いない。
「っ、そうだ、堤防だ!」
その時、呉葉が何か思いついた声をあげた。またまた、オマケにもう一つまた、嫌な予感しかしない!
「それで二次災害起こったりしないよね!?」
「もう既に、三次、四次だがな!」
「何でもいいよ!」
「少なくとも、もう天変地異が起きないようにはする!」
いつかのように、力が尽きて倒れないことを祈りながら、指を蠢かせる呉葉を見守る。我ながら情けないことだが、呉葉に頼る以外、方法がない。
「ちなみに、何を考えてるの!?」
「山を一部切り取って海岸線に移動させて防ぐ!」
「山ァ!? まさか富士山とか言わないよね!?」
「そんなワケが無かろうに!」
僕はほっとした。富士山は活火山なので、その山が消失したとあれば、それこそ何が起こるか分かったモノではない。冷静さは失っていないようで何より――!
ずずずずず、と、地面から岩の壁――氷の壁? がせりあがってくる。
「紹介しよう」
「――? 何を?」
「チョモランマだ」
富士山どころじゃなかった。世界一、大きな山だった。




