《第671話》『異常気象!』
「逆に考えよう!」
「あァッ!? 何だって、聞こえんぞッ!?」
「逆に考えようって言ったんだよッ!」
二人並んで堤防に伏せながら、作戦会議。風と雨のせいで、声を張り上げねばお互い聞こえない。
このままでは、海で遊ぶどころか、日本そのものが大ピンチだ。“0”hPaの台風なんて聞いたこともない。
「今気圧の無いところに、空気を流し込んだらどうかなッ!?」
「どうやってだッ!?」
「さっきの空間転移と逆のことをやるんだよッ!」
「っ、なるほどッ!」
伏せながら海のかなたの地平線を睨み付ける呉葉。先ほど同様、指先を動かし力を行使し始める。
――そして程無くし、
「や、やったぞ、風が収まってきた――!」
「雨は相変わらずだけど、これでこの国は守られた、か、な――?」
海へと向かって吹いていた風が、次第にこちらへと吹き込む風へと変わってゆく。その変化は、台風が消滅していることを意味していた。
「二の舞にならぬよう、広範囲から空気を集めて、低気圧へと送ってやったわ」
「もう一つ新しくできることもないわけだね、よかった――た……?」
――心なしか、こちらへと吹き込んでいた風が、強くなり始めた気がする。
いや、気がするどころじゃない。あからさまに、肌で感じて分かりやすく強くなっている。しかも、なまら暖かい。
「な、なんだ? 何が起こっている――?」
「――今思ったんだけどさ、」
「何だ?」
「今の今まで、超・低気圧に向かって風――空気が吹き込んでたんだよね。それも、すさまじい風速で」
「うむ、そうだな。だからこそ、気圧の下がったその場所に、夜貴のアイデア通り空気を送り込んだのではないか」
「でもちょっと待ってよ。確かにそこに空気が流れ込もうとする動きは無くなったかもしれないけど、」
「うん?」
「今の今までそこに流れようとしていた空気が無くなったわけじゃない。すると、ある程度の勢いを保ったまま、その場所に集うことになるわけで、」
気がつけば、強烈な勢いの熱風が吹いていた。
「ぶわっ!? 暑い、何だこれはァ!?」
「結果、超・高気圧が生まれて、さらに連動して圧縮断熱が起こるわけで――、」
今、この海岸には――至近でファンヒーターの温風を浴びるような風がなだれこんでいた。
――あれ? これ僕のせい?




