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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十九章
658/1022

《第657話》『火中の夢』

「ごほっ、ごほっ――くっそ、どうすりゃいいんだ……っ」


 煙で前が見えず、視界はどんどん悪化していく。

 熱で喉が焼けるように熱い。電動シャッターの操作盤を操作するが利かず、手で空けようとしても歪んでしまったのか、ビクともしない。


「な、に、やってるんですかぁ――っ! そっちは駄目です、ガレージの後ろの出口があるでしょう……っ」

「ンなことわかってんだ、よ――ッ」


 全身に傷を負っているが、両者共に歩く程度のことはできる状態だった。そのまま車を回り込んでガレージ後方の扉から出れば外に出られるのだ。


「じゃあ、なんでシャッターを開けようとしているのですかぁ!?」

「決まってんだろ――ッ」


 ちらりと、漆黒の車体に向けられた視線。それだけで、もう一方は彼が何を言いたいのかを察する。


「っ、君は馬鹿ですかぁ!? 死んだら元も子もないでしょぉ!?」

「うるせぇっ! 馬鹿って言う方が馬鹿だっ!」


 この車は――特別にチューンしたGT-Rは、二人の夢の懸け橋だった。


 全日本ツーリングカー選手権が開かれるのは、今年で最後になる。この車は、そのためだけに、改造した車なのだ。

 自分達のチームを、自分たちの実力で立ち上げ、そして参戦する。例え思っても、普通はそうそう出来ることではないと自覚しているが故の意地。


 勿論、改造費用も期間も一朝一夕とはいかない。もしここでこの車を失えば、参戦権は無くなったと言っても過言ではない。


 だから、この車を置いて逃げるわけにはいかなかった。


 失うことはすなわち、夢を捨てることに繋がるから。


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