《第655話》『ハイスピードダウンヒル』
左低速コーナー、カラツィオラ・カルッセルの入り口に差し掛かったところで、バックミラーに冀羅の姿が映る。
こちらもコーナーに入ろうとしていたところであるため、ちらりとしか先ほどの状況を見ていないのだが。どうやら、コースアウトから立て直したらしい。
減速から、コーナーにアプローチ。この場所はニュルブルクリンクでも有名なコーナーの一つで、内側が舗装されたバンクになっている。このすり鉢状の斜面に入り、横Gに対抗するのだ。
斜めになる視界。コーナー終盤でアクセルをベタ踏みし、バンクもろとも脱出する。
その先にあるのは、ホーエアハト。この左高速コーナーを頂点とし、しばらくはダウンヒルと連続したコーナーが続く。
舗装の古い路面を、そのまま横スライドしながら抜け、次のヘドヴィヒシューヘへ。この左コーナーから始まる連続シケイン区画も、キツイ下り勾配が続くため後ろが滑りやすくなるが、4WDならばある程度抑制できる。
最初のコーナー入口手前で一瞬逆の右側にフロントを向け、次に大きく左にステアリングを切りドリフトへ。
それを抜けてから、右へとリアを引く荷重をステアリング操作で左側へ移していく。慣性ドリフトを決めながら、コーナー二つ目をクリア。
一瞬アクセルを底まで踏みつけて、再びブレーキ。タイヤのグリップを利かせながら、次の右を旋回。
コーナーを済ませた後、エンジンをレッドゾーンまで噴け上がらせ、次の旋回ポイントに到達したところで最初同様逆にステアリングを切るフェイントから左コーナーへとアプローチ。
テールスライドしながら、再び慣性ドリフト。ヘドヴィヒシューヘの出口、一番下が見えてくる。
ゲームでも思うことだが、この区画が個人的には一番楽しく、そして気持ちいい。リアタイヤを流しながら抜け行っていくテンポの良さもアリながら、大きくスピード加減を間違えればコースアウトしてしまう、程々の難易度もそれを手伝っている。
下った後は上りがくるもの。坂を上がったところから、ヴィッパーマンと呼ばれる右中速コーナーがお目見えだ。
前輪から荷重が抜けやすいキツイ登りコーナーをスライドしながら駆け上がる。後ろのスライドで、前輪のグリップをコントロールするのだ。
この下りから上り、会心の走りができた。冀羅と言えど、例え引き離すまではいかずとも差を詰めるまでは難しいだろう。
そうほくそえみながら、ちらりとヘドヴィヒシューヘを抜けてくる黒い車体を見る。
さあ、必死に追いかけて見せろ。それとも、これで終わりとは言うまいよな?




