《第647話》『予想』
「ボクにその話題を振るのか――」
自信満々に見せられた絵が子供のラクガキ同然だった、とでもいうような顔。僕としては、今の状況を楽しむための会話の一端だったのだが、変な事を聞いただろうか。
「――そう言うキミは、どう読むのかね?」
「僕は読むとかそう言う事までは考えたりは出来ないけど――そうだなぁ……冀羅、かな?」
「ほう、それはなかなか興味深い直感だね? 普通、自分のつがいを応援したくなるものだと思うが」
「いや、応援、と言うか……一つの勝負事ではあるけど、殺伐としたものじゃないし。呉葉も楽しむ気持ちが強そうだし。これは一種の遊びの延長線上で、それを逸脱することは決してない」
「――つまり?」
「ああいう時の呉葉は、大体――……ドジる」
僕がそう言い切ると、イヴちゃんは目を見開いた。そしてそれはすぐに細められ、口からはくくくっと言う笑いが漏れ出てくる。
「なるほど、実力うんぬんより、本人の性格や傾向の問題か。最近の鬼神サマと一番長くいるキミが言うのだろう、間違いはあるまい」
「そう言うイヴちゃんはどう思うのさ?」
「そうだね――ボクはこの二人の勝負……、」
顎に手をやって、目を伏せるイヴちゃん。年齢の割に妙に大人びてると言うか、何というか。とても賢い子だけど、そう言う年頃でもあるのかもしれない。
「まことに残念ながら、あの鬼神サマが勝つのではないかな」
「残念!?」
「ああ。腹立たしいことに。本当に。実に苛立たしく、無様に負けやがって欲しいところだが、ボクはそう読むよ」
「め、目の敵にしすぎだよ――! でも、どうして呉葉が勝つって?」
きっと僕より多くのモノが見えているであろう彼女が、やたらと敵視しながらもそう言うのだ。どうして結果をそう読むのか、気にならない筈がない。
イヴちゃんは、人差し指を立てる。
「そもそも、誰が運転しているかを考えてみたまえ」




