《第628話》『天気:快晴』
「――しかしまあ、随分と大がかりと言うかなんというか、派手にやるものだね、あの鬼神サマは」
ドイツで勝手に盛り上がる妖怪達を、しらけた目で見物する金髪の女の子。
彼女も、駆り出されたのだろうか? ――この子の場合、それならむしろ逆に来ない気もするが。
「イヴちゃん、こんにちは」
「む――樹那佐 夜貴」
「君も、呉葉に連れてこられたの?」
「ああ――あ、いや、祖父が半ば無理やり、な」
「あはは――君も大変だね」
「――そうでもない、な」
「ん?」
「――いや、何でもない」
相変わらず、ちょっと無口なところは変わらないようで。けれども、どこか少し楽しそうに見えるのは、僕の気のせいだろうか?
「おーい、夜貴ー!」
「え? なぁにー!?」
ピットエリアの出口付近でこちらを呼ぶ呉葉に、同じく声を張り上げる僕。ちなみに、僕はもう少し離れた位置にいる。一人寂しそうなイヴちゃんに、声をかけに来たのだ。
実際、厳密なことを言えば狂鬼姫の部下から外れる位置に居るので、周りが妖怪だらけな彼女は、ひとりぼっちなのかもしれない。
「レースクイーン!」
「えぇ?」
「夜貴がやってくれぇーっ!」
「ハァああああああああああああああああああああッッ!!?」
また、ウチのお嫁さんおかしなこと言ってるよ。
「やらないからねーっ!」
「なんだとぉー!?」
と言うか、僕一応男ですし! 男にそんな格好させようなど、一体何を考えてるんだ呉葉!?
「ふむ――」
すると、イヴちゃんが腕組みをして、息を吐いた。
「ボクが、代わりにレースクイーンをしようか?」
「いや、やめときなよ、空気肌寒いよ?」
「…………」
「!?」
突然、イヴちゃんに足を蹴られた。体格の割に、ものすごく痛かった。
「――しかし、少し空気が湿っているな」
「え、そう? ――そう言えば、なんとなく……?」
「果たしてそれがレースにどう出るか――見ものだな」




