《第618話》『その名は――』
「夜貴、妾探偵やりたい」
「また何かに影響受けたね呉葉――」
身体の前で、両握り拳。顔は満面の笑みだ。
「身体は子供、頭脳は鬼神! その名は、名探偵・呉葉!」
「凄く腕力で解決しそうな探偵!」
だが、暴力はいけない。割とそれで解決出来そうな気が不思議とするけど、暴力はいけない。
「失敬な! この鬼神として長きを生きてきたことによって蓄積した、膨大な知識、そして体力を活用するに決まっているではないか! ペロッ、これは――青酸カリ!」
「呉葉の場合、その知識も偏っていそうなんだよなぁ――!」
主に、趣味嗜好関連に。探偵のことはよくわからないが、少なくとも思考をそっちに引っ張られるのはよろしくないだろう。
「それに、探偵のお仕事って、事件解決だけじゃないし、むしろそっちが来るのは珍しいんじゃないかな」
「確かにそれはある。通常は、浮気調査や失踪者の捜索を行っていそうだ」
「できないでしょ?」
「任せろ。変装、尾行もできるぞ。以前のお前をつけたことがあったが、知らないだろう?」
「ああ、あのもう一人の呉葉が生まれた時の――」
「…………」
「――えっと、あ、あはははは……」
「――なるほど、どうにも妾はそう言うことには向いていないらしい」
「――うん、残念だけど諦め、」
「よろしい。ならば事件解決のみに携わろう」
「意地でもやる気!?」




