《第617話》『あのー、勝手に決めないでくださ……あ、誰も聞いてませんね、はい』
「今日なんとなくの気分で、ここに居座らせてもらうぞ!」
「あのー、呉葉ちん――?」
僕と一緒に出勤してきた呉葉に、困惑するみんな。ディア先輩が代表して物申した通り、全員同じ気持ちだろう。
「何だディア? 当然ながら、仕事の邪魔にはならぬよう努めるぞ」
「いや、あの、そうじゃなくてさ――前も言ったけど、一応ここ、こういう職場だしさ……」
「もはや組織ぐるみで見なかったことにしよう扱いだから、もはや構わぬと思ったのだがな」
「いくらなんでも遠慮なさすぎだと思うんですけど!?」
実際、組織上層部からは、道摩の件であれだけおおっぴらに暴れているのに、何の連絡もない。知っているヒトも、結構多くなっているハズなのに。
――まあ、一応こんなフリーダムなヒトでも、未だ影響力の強い鬼神だし、敵に回したくないのかもしれない。少なくとも、友好的に見える今の現状を崩したくないのだろう。
「こんなカンジで言っても聞きそうにないので――今回だけは、許してあげてください」
「コーハイ、アンタも何だかんだ呉葉ちんに甘いねぇ――っ!」
「しょっちゅう公私混同、職務中酒を飲むお前に言われたくなかろう。安心しろ。一応、立場は分かっているつもりだ」
「はぁ――ま、アタシもそんなに厳しく言うつもりはないけどさ。一応、立場はちゃんとわかっていてほしいって意味で、注意したんだよ」
「ふっ――分かっているとも」
「だから、お酒の話しないでくれ、頼む――! 飲みたくなっちゃう……っ」
「いつも、我慢できているとは言い難くないですか――?」
こうして、呉葉はその日1日居付くことに。お茶汲みを進んで行い、邪魔どころか、皆の事務お仕事のサポートを積極的に行っている。
――ただ、
「何でそこで突然イチャるんだ!?」
「今日は、妙に夜貴エネルギーの消耗が激しいのだ。こうして充電していないと、死んでしまう」
「どこかで聞いたようなこと言わないでおくれよ――! 独身のアタシに喧嘩売ってんの!?」
きっかり一時間ごとに、ごろにゃ~んと僕の腕に取り付いてくる呉葉。
一部のヒトには、目に毒らしい。




