《第614話》『お茶漬けの日』
「今日は――まあ、お茶漬けで昼は済ますか」
冷凍していたご飯をレンジで解凍し、お茶碗へ。そこに永〇園のお茶漬けの元を振りかけ、ポットのお湯を注ぐ。
自分だけの時は面倒なので、大体こんな感じで妾は済ます。後は適当に、冷凍食品を解凍したりなどだ。
「まあ、昔は茶漬けも、こんな豪華絢爛ではなかったのだが」
お茶漬け――と言うより、それに似たモノは、平安時代からあった。
もっとも、当時はお茶なんぞなかったから、水飯だとか、湯漬けだとか呼ばれていたが。
しかも、こんな風に具の乗っかったモノなど、江戸時代くらいまで進まねば無い。
「食いやすいから、割と昔から好きだったがな。とっとと済まして別のことに取り掛かりたい時は勿論だが、何もない時でもしもべに注文したものだ」
――それにしても妾、最近独り言多くないだろうか?
いや、確かに年を取ると独り言が多くなる、と言うが――妾、別に年寄りのつもりないし? そりゃあ多少長くは生きているが、まだまだ若いつもりだし!
だが、とも思う。こうして、昔を振り返ることもやたら多いのではないか、と。
昔はよかった、と言う形で思い出していることはあまりないが、それにしてもやはり、何というか。
でもでも、流行にはそれなりに敏感だし! 今どきの奴らに引けを取るつもりは無いし! ついこの間も、調子に乗っている若造を……っ、
と、そこで、はたと気がつく。
――って、これ、思いっきり年寄りの思考ではないかっ!




