《第612話》『パ〇プンテ・ストロベリー』
「さて、またまたもらった魔界イチゴだが」
「うん」
「イチゴムースにしてみた」
ディアがまたもや、魔界から送られてきたと言うイチゴをおすそ分けしてくれた。
――しかし、相変わらず何というか。独特な見た目をしている。先端はトグロを巻いているし、刺々しいし、何より色が黒紫で毒々しい。
オマケに謎のぬめり。手に持てばズシリと重く。そしてやはり漂う、生臭さ。
これでおいしいのだから、世の中――いや、魔界はよくわからない。
「そうして出来上がったのが――これだ」
「――ナニコレ?」
「イチゴムース」
「うん、まあ、そうだよね――」
呉葉が出してきたのは、プラスチックのコップに入れられた――なんだろ、青緑色をした……やっぱり、何?
「一応言っておくが、ちゃんと作り方を調べて作ったぞ」
「分かってるよ――作ってる最中、変な声あげながら何度もパソコン確認してたのを見たし」
「変な声言うでない! 飛んだり跳ねたり、時々トルネードするのだぞ!? どこにも、クッ〇パッドには書かれていない!」
「流石のお料理サイトも、魔界イチゴだけはカバー範囲外だったみたいだね――」
このイチゴムース、今は静かだが、なんだかお酢のような酸っぱいニオイが漂ってくる。ぼこっとガスが噴き出たりはしなかっ――なんで言った矢先泡立ち始めるかなぁ!?
「――念のため、妾が先に毒見……いや、味見しよう」
「言い直さなくてもその顔で充分伝わるから! というか、無理しなくていいよ!?」
「いや、折角友人がくれたイチゴで作ったのだから、おいそれと捨てるわけにもいかん」
「作り方を遊んだわけじゃないのに、どうしてこんなことに――」
呉葉が、スプーンでムースをひとすくい。何故だか小さく、「ギョエー!」と鳴く。もちろん、ムースが。
それを――勢いに任せてパクリ。あまりにあまりの光景に、止めることもできなかった。
「む、ぐ、むぐむぐ――」
「ど、どう――?」
「ううむ、これは――……ごくん」
「これ、は――?」
「炭焼きカルビ、だな」




