《第605話》『ゴーヤの日・特価』
「今日はゴーヤチャンプルーを作ってみたぞっ」
もやしや豆腐、そして豚肉と言ったモノの中に、ゴーヤの緑と言う、鮮やかかつ食欲をそそられる炒め物。大きな器に盛られたそれからは、とてもおいしそうな香りが漂っている。
「ゴーヤというのもまた、珍しいね?」
「今日、スーパーで安売りしていたのだ。で、ゴーヤと聞いて真っ先に思いついたのが、」
「チャンプルーだったわけだね?」
食卓につき、取り皿に分けて、それからいただく。
「――うん、おいしい」
「隠し味に、マヨネーズをいれてみたのだ。味がまろやかになるらしくてな」
隠し味の効果かは知らないが、とても食べやすかった。味も濃すぎず、いくらでも食べられそうな気がする。
そう、舌鼓をうっていた。そんな時だった。
がらっと、家の窓が開いた。
「くっくっく――狂鬼姫よ、耳寄りな情報を教えてやろうかのう?」
「駄狐!? 貴様なぜここにいるのだ!?」
「!?」
そこには見知った化け狐の顔が。――あ、なんだかよからぬことを企んでいそうな顔……、
確か、この前のラ・ムーの時に乱入してきて、その後呉葉がどこぞかへ飛ばしたとかなんとか言っていたような気もするが――。
「貴様に星空の中に放り込まれた時は、どうしたモノかと思ったが――」
「宇宙空間に投げだしたと言うのに、生きているとは意外だな」
「呉葉! 流石にそれは酷いと思う――!」
「それは、とりあえず今はいいじゃろう」
「いいの!?」
「何?」
「耳寄りな情報をくれてやると言ったじゃろう!」
そう言って不敵に笑う鳴狐。しかし、こういう時はいつも――……、
「狂鬼姫! よぉく聞くのじゃ!」
「――っ!」
「ニガウリを食べると――子を身ごもりづらくなるのじゃぁっ!」
「…………」
高笑いする鳴狐。じとっと、それを見つめる呉葉。
ううん、これは――、
「ぬあっはっはっはっはぁ! どうじゃ、夫婦間の貴様らにとっては死活問題じゃろう! しばらくの間、子のできぬ苦しみに想い悩み嘆くがよい! ぬぁっはっはっは――……、」
「おい、駄狐」
「何じゃ? 恨み言――……ふぐぉうっ!?」
「未だそのような事態になりそうにないことを煽りに来たのならそう言えぇええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」
「ぶぐおぅっっ!!?」
――何かゴメン、呉葉。




