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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第十八章
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《第602話》『つまようじ』

「おい鬼神、何かくれたまえ」

「ハァ?」


 来客のインターホン。呉葉がそれに対応しに行ったのだが、しばらくして、顔出し・声NGな自由業のヒト張りの聞き返しが聞こえたため、様子を見に行くことにする。


「あ、イヴちゃん、零坐さん。こんばんは」

「む、ああ――夜分遅く失礼する、よ」

「こんばんは、と、お隣さん故それくらいの挨拶はしてやりましょう」


 紙袋を手に提げたイヴちゃんと、その祖父にあたる零坐さん。時刻は現在午後9時頃、つまり夜なのだが――いったい、こんな時間にどうしたのだろう?


「夜貴、聞いてくれ! この幼女、訪ねてくるなり何かよこせと言いだしたぞ!?」

「呉葉様、申し訳ございません――っ! こ、これイヴ、失礼だぞ!」

「祖父よ、それを言うならあなたのその――もう一人に対する態度を改めてからいいたまえ」

「ぼ、僕は別にいいよ――ところで、突然どうしたの?」

「あ――うむ、今日は、その、一応こどもの日だろう? 図々しいことを承知してはいるが、折角世間様が決めたこの日くらい、我儘を言ってみようと思って、ね」

「そもそも、きっと普段から我儘放題なのだろう! わざわざエイプリルフールだから嘘をついてもよい、みたいなその理由は納得せんぞ!」

「キミとは違うのだよキミとは」

「にゃにおうっ!」

「ま、まあまあ」


 大人げなく怒り出す呉葉を宥めつつ、金髪の小さな女の子を見る。彼女はその小さな頭でとんでもない発明を思いつく子だが、上目遣いでこちらを見る視線は、年相応の子供らしくもあった。


「で、何が欲しかったりするのか、な」

「む――別に、何かが特別欲しいわけではない。もらうことに、意味がある、のだよ。……まあ、無理にとは言わないが、ね」


 目線を合わせるために屈むと、イヴちゃんは目線をそらしてしまった。意外と、引っ込み思案なところがあるのかもしれない。


「うーん、そうだね――ちょっと待っててね」


 僕は一度家の中へ戻ってから、何がいいかとリビングに置いてある、とある箱を漁り、丁度目についたそれを持って行く。


「こんなのしかないけど、いい、かな――?」

「ああーっ!? それ妾の板チョコ! おい夜貴!」

「ま、また買ってあげるから! それとも、他のがいい?」

「いや、これでいい、よ。――感謝する」


 普通の何の変哲もないミルクチョコレートだったが、イヴちゃんはかすかに微笑んでくれた。満足してくれたみたい。

 ――すると、彼女は何やら紙袋の中から何かを取り出した。


「――代わり、と言っては何だが。これを、キミにあげよう」

「――? も、もしかして、ル〇バ? い、いや、ただのチョコレートとそんなルン〇を交換するなんて、いくらなんでも――」

「ああ、えっと――安心してくれたまえ」


 何のことはない、と言って微笑むイヴちゃん。


「ボクが、つまようじから発想を得て作った、全自動掃除機だ」

「つまようじ!? どゆこと!?」


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