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《第五十九話》『二人の呉葉』
朝、か――。
僕は徐々に意識を覚醒させながら、自分の腕の中から感じる熱に安心感を覚える。
普段寝入るときは、呉葉とはこのようにしてくっついて寝る、などと言う事はしないのだが、次の朝起きると、今日に限らずいつも彼女を僕は抱かえている。
最初こそ驚いたものの、いつからかこの状況に僕は慣れていた。そして、それを禁止するつもりも、あろうはずもない。
なぜなら、気が付けば自分のすぐ傍に大切なヒトがいるということを、互いが理解できるのだから。この安堵する感覚は、言葉では例えようもないほど離れがたい。
「おい、夜貴」
そんな、普段通りであるはずの、今日の朝。
「なに、呉葉――」
「妾の跡継ぎを作るために、協力してもらうぞ?」
「え――?」
僕の体の上に乗っかる「もう一人の」呉葉によって、
「え? え? え? え? ――え?」
「どうした? そいつがやかましいから、眠って居る今のうちに済ませてしまおうというのだ。早くしろ」
「えぇえええええぇええええぇええぇええええええぇええええぇぇーーっっ!?!?!?」
あっけなく、突き崩されてしまうのであった。




